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========== 本当の謝辞 ==========

 本書の著者はジェリィ平賀でも亀井遠士郎でもありません。そう、わたくし畑仲哲雄です。それと、本書によって気分を害された方、ご立腹になった方には大変申し訳ありませんでした。心よりお詫び申し上げます。
 さて、本書はわたしにとっていろんな意味で「挑戦」でした。
  ひとつは、現行の著作権法の運用についての挑戦です。職業作家が命を削って書き下ろした名作も、役所の発表データをもとに居眠り半分に書かれた新聞記事 も、著作物として同列に保護されているのはおかしい。大枚はたいて買ったソフトウエアのパッケージを破った途端に発生する使用許諾権契約なんて納得できな い。一方、学者たちの発見や証明のたぐいは、なんら保護されない・・。そんな数々の疑問から、執筆は始まりました。
 もうひとつは、とらえどころのない情報と人間への挑戦です。
  かつて米西海岸でカウンターカルチャーを担った人たちは「情報は自由になりたがっている」と叫びました。情報を自由にするという考えは、わたしも賛同しま す。しかし、一歩引いて考えると、人間そのものも情報と言ってもいいのではないでしょうか。人間とはなにか。手足をもがれても、人間は人間です。手足どこ ろか胴体を失っても、人間は人間です。人間を人間たらしめているのは脳です。そして脳というのは回路=ネットワークのようなもので、そこには膨大な情報が 詰め込まれています。一人ひとりの脳に詰まった情報は、先人たちから営々と受け継がれた(つまりコピーされた)ものの集大成です。人間は機械のような肉体 を持っていると同時に、数々の情報を相互コピーする存在ではないだろうか。これを書き進めながら、そんな確信めいたものを覚えました。
 さらにいえば、本書のありようが、フリーテキストを本にしたということも挑戦です。
  原稿がまだ電子テキストの状態にあるとき、その値段はゼロ円です。多くのフリーソフトと同じく、読者は非営利にかぎって無断複製や無断改変することができ ます。原典と著作者名等を明記すれば、他のメディアに転載することも可能です。ただし、電子テキストではなく紙に印刷された本として読みたいという人もい ます。そんな人のために、ポット出版が原稿を本にしてくれました。ポット出版にしてみると、フリーソフトウエア集を本(CD-ROM)にしたようなもので しょう。
 本書の価格は、誤字脱字を直して、レイアウトを考え、読みやすく編集してくださったポット出版の人件費等が大半を占めており、わたしは 印税の類を一切受け取っていません。ただ、それでは、わたしひとりがただ働きになるので、窮余の策として、読者から寄付を募ることにしました。フリーソフ トのなかには「ドネーションソフト」と呼ばれるものがあります。気に入っていただけたなら二百円でも五百円でもいいから、郵便為替か切手を送って、わたし を勇気づけてください。ただし高校生以下の学生さんは不要です。こうした考えは、日本の作家・出版社・取次会社の間で長年続いていた古いシステムに風穴を 空けるものだと確信しています。
 えらそうなことをたくさん書かせていただきましたが、本書はわたしの創意と努力だけで生まれたものでは、けっし てありません。著作権フリーに関するわたしの考えを面白がって相手になってくださったポット出版の沢辺均社長と編集者の櫛田崇さん、萎えそうになる執筆を 励まし数々のアイデアをくださった科学ジャーナリストの鈴木クニエさん、国際ジャーナリストの田中宇さん、月刊『記録』編集者の安藤幸子さん、本当にお世 話になりました。この場を借りて感謝の意を表すとともに、『本当の謝辞』とさせていただきます。

畑仲哲雄


(了)

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